⁂ダイヤモンド⁂
どの位寝たのだろう。
目をこすりながら、寝がえりをすると、いつもは決してすることのないいい香りが部屋の中に充満している。
そして、それはカチャカチャと音を立てながら騒がしく……
ベッドの所を仕切ってあるカーテンを開けると、いつもは寂しげなテーブルの上に色とりどりな食事が置かれてあった。
「はっ??」
そこから、動けずにいると「おはようございます」と昨日の酔っぱらいとは別人な、いつもよりナチュナルメイク姿の美波が笑って忙しそうに動いていた。
「なにしてんの?」
「出勤前のご飯ですよ!!」
その言葉に時計に目を移すと、午後4時半をさしている。
「はやっ!!」
「なに言ってんですか!ちゃんと食べないとお酒ばっかじゃダメです!!」
あ~、そのセリフそのまま昨日のあんたに返したいくらいだよ!!なんて、思ったがあまりにも楽しそうな美波にその言葉は発されることはなく呑み込んだ。
「つーか、材料は?」
「冷蔵庫は、物を入れるためにあるんですよ?飲み物ばっか……」
「いや、そんなこと聞いてないから、それに料理しないもん」
「だから、買ってきました」
それだけじゃない、料理が綺麗に並べられているこのお皿たちも、ウチにはあるはずがない。
「食器も?」
「そう、買ってきました」
小さなテーブルじゃ、置ききれなそうな料理の数。
キッチンは1度も使ったことがないのに、いつの間にか生活感が満ちあふれている。
「実は、テーブルも!じゃ~ん!!!」
残りの料理たちも、美波が買ってきてくれたであろうもう1つの小さなテーブルに用意された。
「すっごっ……」
何が凄いって、この料理の数々。
そして、全てを用意してくれた美波に対してだ。
「喜んで貰えたなら嬉しいです」
照れているのか、少しだけ俯き加減で言うと、立ったままのあたしに「座って下い!!」と言いながら、お洒落にナイフとファークがが目の前に置かれた。