⁂ダイヤモンド⁂
「感動した」
そう小さい声で呟きながら「いただきます」と手を合わせると美波はあたしの顔をじーっと見つめている。
「あのさ、食べずらかったりする……」
「あ、そうですよね?ハハッごめんなさい」
「いただきます!!」と美波も手を合わせ料理を口に運んだ。
フレンチトーストにチョコソースがかかっていて、隣には生クリームが添えられている。
そして小さな木のボールにはサラダ。
そしてスープはクラムチャウダー、そしてブラックコーヒー。
こういうものって、簡単に作れるものなのか……
ファミレスのモーニング以外で食べるもんなのか……
さすがに、どれから食べていいのか迷い、あたしはフレンチトーストをナイフとファークを使いながら切り、生クリームをつけてに口に入れた。
「おいしっ……うまっ!!」
そして何より温かい、ここにあるもの全てが……。
レンジでチンする必要もない、いつものコンビニ飯とは大違い。それに口の中で、美味しさが広がる。
そして、なぜかスープのクラムチャウダーの熱さが心の中まで温かくなるような……
「良かった、喜んで貰えて」
「ありがと」と下を向きながら料理を口に運ぶと、また美波の視線を感じたがそれに気付かないふりをして、口へと運んでいった。
誰かにお客さん以外で「ありがと」なんてお礼を言うのはあまり好きじゃない。
照れくさいから。
それに、誰かに頼ったりすることもないあたしは口にすることさえなかった。
店の中では作り笑いを浮かべながら、あたしにお金をおとしていくお客さんには何度も言うけれど……
そんな、あたしに気づいたのか美波はちょっとだけクスッと笑うと、「ごちそうさま」と手を合わし、流しへ食器を運んでいた。
「全部食べないの?」
「ヘヘッ、ダイエット中なんですよ~」
「良く言う……昨日の飲みっぷりと食べっぷりを見れば……」
美波はけして細い方ではないが、男達が好きそうなスタイルをしている、長い手足に小さい顔、嫌いな顔じゃない。
「アハッ、ただの二日酔いなだけです!!でも未来さんくらいになりたいです」
「また、いいって……」
「未来さん全てになれたらって……」
そう小さな声で言われたが聞こえないふりをして、目の前に用意された料理を間食すると、美波の後に続き、流しに食器を運んで「ごちそうさま」と美波に向かって言った。
あたしになんてならない方がいい……
そう心で呟きながら。