⁂ダイヤモンド⁂
「おっせぇ~、ギリギリだぞ!!」
待ち合わせていた駅で、高級な車から顔を出しタバコをふかしていた店長はいつもより柔らかい感じに見えた。
同じ人間なのに、どうしてこうも違うのだろうか……
やっぱり昼間のマジックのようだ。
そんなことを考えていたあたしは視線を感じ、顔を上げるとニヤついた店長があたしを見つめていた。
「なによ」
「全然ちげ~なぁ……」
「うっさい!!そりゃ、暗闇にいた方が……」
「ちげ~よ、最近の未来は変わったってこと!」
あたしの言葉は店長の声に簡単にかき消されて、美波はちゃっかり車に乗り込んでいてあたしを見て笑っていた。
最近のあたし……
何もなかったかのようにタバコの煙を「ふう~」宙に吐くと「早く乗れ!」と言わんばかりにあたしに目で合図した。
「さて、出発だぁ!!」
「出発っ~!!」
ドアを閉めた瞬間に、二人の声が車の中に響き車は静かに発進した。
窓から外を見つめてみると、さっきの明るい世界が真っ暗に映っている。
それはきっと、フルスモークのせいだろうけど少しだけ寂しくなり窓をじーっと見つめていた。
「未来、今月もまだ半月経ってないけど順調だな!!」
「あ、うん」
「美波も先月の倍は売上あがってるぞ!!」
「マジですか~?やったぁ~!!」
「だからって、あんまり男に貢ぐなよ!!」
「……」
甲高い声が突然聞こえなくなると、なぜだか一気に空気が重くなり美波の方に視線を向けると、悲しそうな顔をして窓を見つめているのが分かった。
だけど、それをあたしは見て見ぬふりをして、同じように見えやしない窓のと外を見つめた。