⁂ダイヤモンド⁂
見たことのない世界……
あたしが5年間過ごしてきた世界は、いつも暗い世界。
こんな風に明るさなんて何もなくて
みんながこんな風に一体となり騒いでいる世界でもなくて
あたしは……
いつも同じ道を歩き出勤し、“未来”というあたしが生まれた世界に足を踏み入れ、仕事が終わった後はマンションまで帰るだけの毎日。
すれ違う人達はなぜだかほとんどが張りつめた顔をしている。
同業の人達がほとんどなんだろうか、自分だけが浮いている感じなんてしない。
だけど、今は周りを見渡しても、みんな楽しそうに笑顔を振りまいている
夜の世界みたいに作られた笑顔ではなく、みんな本物の笑顔で……
ここにいる自分だけが、浮いているように感じて、それがなんだかとても心地悪い。
「おう、酒だ!酒っ!!」
店長が、隣で手を挙げると、何かを後に抱えている女の子があたし達の元へ駆け寄ってきた。
「なにこれ……」
「ビールですよ」
「はっ?」
店長の前にいる女の子は、きっとあたしより少し若いだろう。
重たそうにサーバーを背負いながらも笑顔で、ビールを紙コップに注いでいく……
この時期なのに、汗を滲ませながら。
「未来も飲むだろ?」
「あ、うん……」
あたしは、ただひたすらその女の子を見つめていた。