⁂ダイヤモンド⁂
試合は終わり、あたし達が応援していた巨人は5-3で勝利。
「いやぁ~本当にすごかったぁ……」
一斉に帰宅する人ごみに紛れながら、少し大きな声で店長と美波に話しかけると、
二人は目を合わせてクスクスと笑っていて、そんな二人に「ねぇ、あの今日2本ホームラン打った人ってなんていう名前なの?」なんて聞けば。
あたしの言葉に「はっ?」と不思議そうな顔して二人で爆笑していた。
「なに?」
「いや、なんでもない」
「なによ!!」
「つーか、名前って分かるだろ?ユニホームにも書いてあるし打つ前にも名前呼ぶじゃないか」
「そうなの?聞いてなかったし、見てなかった」
「じゃあ、何を見てたわけ?」
「野球だよ!!」勝ち誇りそう言い放ったあたしに美波と店長は腹を抱えてまで笑っていた。
「しかし凄かったな」
「はい、凄かったです」
あたしを間に挟み、二人を会話しているのを聞いていると
「未来がな」
「未来さんがです」
再び、あたしを見て笑っていた。
自分でも分かっていた。
こんなにも心から笑い、はしゃいだのは、確か遠い昔にあった気がしてその懐かしさが心地よくて、そして恥ずかしくて、その後二人の顔を見ることが出来なかった。