⁂ダイヤモンド⁂
ーーバタン!!!ーー
静かな部屋に響き渡ったのは、男が雑に閉めたドアの音。
「うるっさ…」
「あ?いいから、そこ座れよ!!」
そう言いながら男は先に高級そうなソファーに腰掛けタバコを咥えると静かに火をつけた。
「えらっそ~に、なんなんだよ!!」
男の言われるままになんてなるもんかと、あたしはその場で意地でも立っててやると男を睨み続けた。
黙りこむ男の口から白い煙が空中に吐き出され、男は立っているあたしを冷たい目で直視していた。
その鋭い視線といったら、こんなあたしですら心が折れてしまいそうで……
「なんだってんだよ、座ればいいんだろ!!」気が付けば、沈黙とその鋭い視線にあたしはみかねて、その男の横に腰を下ろした。
「ふっ…」と鼻で笑ったかと思えば、「単刀直入に言う。今日からここで働け」そう言いながら最後に溜めていた煙を一気に吐き出した。
「はっ?……えっ??」
「どうせ、帰る場所なんかねぇんだろ」
「うっさいな!!!じゃあ、ここで寝止まりしてもいいのかよ!!」
帰る場所……。
一瞬だけ頭によぎった思いを打ち消すかのように、大声を張り上げていた。
「あぁ、寮がちゃんとある」
「ハハッ!ふざけえんなよ!人を何だと思ってんだよ、やらねぇーよ」そう言いながら立ち上がると、また腕を掴まれた。
「だから、いってーから!!」
「捨てろ!!」
「はっ?」
「全て捨ててしまえ!!」
力強く掴まれた腕を払おうともしたが、それは簡単に阻止された。
「今日から働け」そう言いながら立ち上がった男は、ロッカーから取り出した真っ白いドレスをあたしに突き付けた。