⁂ダイヤモンド⁂


「未来さん今日はセットは?」

「しない」

「そうなんですか、なんか機嫌悪いです?」


鏡の前で、もうドレス姿になっていた美波が不思議そうにあたしの顔を覗き込む。


あんたのことでだよ……


そう言ってやりたかったが、なぜだかそんな言葉を美波にぶつけることができなかった。


「疲れただけ」


そう美波に向かって言ったはずなのに、美波はもうあたしの近くにはいなくて大きな鏡の前で髪を綺麗にセットしていた。



全く、気にしてないじゃんか……


『完全に美波に振り回されてんじゃん』


さっきの店長の言葉を思い出すと、一層気分が悪くなりため息をつくと、周りの女の子たちは、あたしを視界に入れまいと体制を変えていた。


「今日は終わった後はよろしくお願いしますねっ♪」


また、あたしに水をさすかのように一言だけ言い放ち更衣室を出て行く美波にあたしは肩を落とした。




おかしい、完全に美波に振り回されている。


まだ、自分の気持ちが少しづつ変わっていくことを否定したい自分がいて、店に入ることが重くなっていた。

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