⁂ダイヤモンド⁂
除々に更衣室の中が仕事を終えた女の子たちで賑わってきている。
お客さんの悪口やアフターの話
お酒に呑まれ、化粧もおちている女の子
お酒を飲んだふりをしていたが全然しらふでいる女の子
周りを見渡すとさっきまで一生懸命笑顔で接客していた姿なんてこれっぽっちもない。
恐ろしい世界だな、なんて思いながらも自分も同類だったりするから困ったものだ。
「未来さん、早くして下さいね」そう言うと、あたしに意味ありげな笑顔を向け先に更衣室を出て行った。
「はぁ……」
大きくため息をつきバッグを手にすると「お疲れ様です」と女の子たちに言われれば「お疲れ」と一生懸命作った笑顔で返し更衣室を出た。
「なにこれ……」
淡々と前を向き胸を張りながらあたしより先に歩いてる美波に言うと、少しだけ振り返ったが足を止めることはなかった。
この時間にこの明るさ……
もはや、夜中なんてことを一瞬で忘れさせてくれるようなギラギラ輝いている街。
確かに、自分の店の周りだってあまり変わらないのかもしれない。
だけど、普段前だけを向いてただ歩くことだけに集中しているあたしは、周りなんて気にしたこともなく、上を見上げることもなかった。
だけど、この人間の多さと人工の光の多さには、まるで田舎もののような挙動不審になっている自分がいる。
「ここです!」
一軒の店の前で足を止めたかと思えば看板を指差していた。
「shine??」
「そう、あたしここの常連なんです」
店長に言われて分かっていたつもりだが、店の前に立って改めてホストクラブだと知ると大きく肩を落とした。
「なんであたしが……」
「野球に行ったからおあいこです」
「つーか、それってさ……」
言いかけた瞬間に、先に店の階段を上っていき、こんな場所で独りにさせないでよと慌ててあたしも美波に続いた。