⁂ダイヤモンド⁂


「光くんこっち座って♪」

あの甲高い声で言い美波が立ち上がると、あたしと美波の間に“光くん”を座らせようとしていた。

「失礼します」

そうまた、あの笑顔であたしに言うと“光くん”は静かに腰を下した。


なんだか変だ、この逆バージョンあたしにはきつい。


周りを見渡すと、男の子たちはみんな笑っている。

中には女の子に接近して触れていたり……


「嘘くさっ……」見渡せば見渡すほど、全てが偽物に見えてくるこの空間

美波は同業なのに、こんな風に感じないのだろうか……


「名前……」

「えっ?」

「名前聞いてもいい?」


“光くん”が、人間観察しているあたしに言うと


「未来」とぶっきらぼうに答えた。



そんなあたしに優しそうに笑いながら「未来かぁ~」とお酒を作りながら言うと、目の前のコースターに雑にグラスを置くと、


「変な名前……」と静かに呟いた。


はっ……!?
そう思うのに時間は、かからなかった。


“光くん”が作ってくれたグラスに注がれたお酒は、あたしの手によって自然に彼の頭へと注がれた……



「未来さんっ!!!」


慌てて美波があたしの手から乱暴にグラスを取りあげると“光くん”は「おもしれ~」と自分で持っていたハンカチで顔を拭いてあたしに笑顔を向けた。


< 73 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop