⁂ダイヤモンド⁂
気がつくと、あたしの目の前に“光くん”ではない黒服をきた男の人があたしに頭を下げている。
「光、未来さんは美波ちゃんの店のナンバーワンの子だ」
「未来さん光くんはここの店のナンバーワンの人で」
黒服の男の人は“光くん”に……
美波はあたしに……
必死に一生懸命、落ち着かせてるつもりなのだろうか……
「関係ねぇよ!!」
「関係ねーよ!!」
あたしと“光くん”の声が重なった。
その二人の姿に、黒服の男の人と美波は驚き顔を見合わせていた。
なに、こいつッ……!!
苛々しながらも、ここで帰ったら負けだ……
そう思って、高級感溢れているソファーに深く座りグラスを付きつけ「お酒」と作れと言わんばかりにあえて“光くん”の目の前に置いた。
美波は少しだけ濡れてしまった“光くん”のスーツを自分のハンカチで拭きながら、あたしの顔色を伺いながら苦笑いをしていた。
冗談じゃない
あたしの怒りがこみ上げた理由はちゃんとある。
あたしの名前は、店長が選んで決めてくれたからだ。
自分の本当の名前を侮辱されたのなら、きっと笑ってすませていたのかもしれない。
「謝って」
お酒を作っている“光くん”にそう呟くと「あんたも」と言い返され、あたしはあまりにも、その席に居ることが耐えられず立ち上がりトイレへと向かった。