⁂ダイヤモンド⁂
「未来さんっ……!!」
勢いよく飛び出した外はもう朝を迎えようとしていた「マジか……」いつもにも増して早足なあたしは大通りに出ると手を挙げ1台のタクシーを止めた。
「未来さんっ、ちょっと待って!!」
その声に大きくため息を吐きだし、しょうがなく振り向くと、高いヒールで今にも転びそうな足取りで追いかけてくる美波の姿。
それと同時に、手を挙げたあたしの前に止まった1台ののタクシー。
自動に開いたドアを持ちながら「ちょっと待っててください」そうタクシーのおじさんに言うと「いいですよ」と優しい笑顔で言ってくれた。
「なに?」
息をきらした美波に低いトーンで言うと「ごめんなさい」と頭を下げた。
いくら朝方だと言っても、この街の人ごみは減るどころが増える一方……
そんな中、タクシーに乗ろうとしているあたしの目の前で深く頭を下げていりゃ、周りの人の視線を無条件で集めてしまうことも無理はない。
「はぁ、ねぇちょっと顔あげなよ、あたしが悪者じゃん」
確かに、悪者に間違いないのかもしれない。
あのくそ男がいたさっきの店でもきっとあたしは悪者になっているだろう。
「いや、あたしがあの店に……」
そこまで言うと、酒のせいか真っ赤な顔をした美波が顔を上げあたしをに申し訳なさそうな顔をし見つめていた。
「いいよ、別に…でも、もう借りは返したから。じゃあね」
そう言葉を残し、待たせていたタクシーのおじさんに「すいません」と声をかけると、それに乗った。
美波のことだから一緒に乗り込むのかと思ったら、その場に立ちつくしたままで下を向いていた。
一瞬、開いたままのドアから「乗らないの?」と声をかけようとしたが、なぜだか美波にあのくそ男を重ねてしまい、言う気にはなれなかった。
「行って下さい」そうタクシーの運転手さんに告げると、少し気まずそうにあたしの顔を見つめながらドアが閉まった。
自分の家の道のりを告げると、あたしはシートにもたれかかり大きなため息と共に窓の外を見つめていた。