⁂ダイヤモンド⁂
「そういや、昨日は美波とホストに遊び行ったのか?」
店長の車の中は静かで音楽さえもかかっていない。その空間の中で店長の言葉が響き、一瞬で昨日の出来事が全て蘇り、さっきの赤らめていただろう顔から、素に戻り、怒りがこみ上げてくる。
思い出すだけで不愉快で胸糞悪いってもんじゃない。
「その顔じゃ、どうやらお気に召さなかったようですな」
「……」
キーンと車の中にデュポンの音が響く……
そしてそれが店長の加えているタバコに火をつける。
「あっ!!それ……」
「ん?なんだ??」
「いや、持っている人いた」
「おお、このデュポン?これは秋山さんからの貰いものだよ」
「秋山さん??」
「ああ、俺の誕生日にな、かなり高級なプレゼント……」
一瞬なんであのクソ男と同じなのだろうと思ったけど、この世界にいれば珍しいことでもないのであろうとそんな思考は一瞬でかき消された。
信号で止まった車……
店長は、そのデュポンを見つめながら「どこに行っちまったんだろうな」と静かに呟いた。
その空気が重たすぎて、なんだか胸が苦しくて「ホストでむかつく男に出会った」今さらかと言うくらい話を戻したあたしに、店長はワイシャツのポケットにデュポンをしまいながら、信号が青になると同時にアクセルを踏み込んだ。
「むかつく男?」
「NO1らしいよ?あんなクソ男が……」
「アハハハハッ、クソ男ってか、なんかされたの?言われたの?」
「されたも、言われたもなんでも良いけど生理的にうけつけない」
そんなあたしの言葉に、店長は楽しそうに声を上げて笑っていた。