⁂ダイヤモンド⁂
「それが、美波の惚れてる男か……」
「知ってるの?」
「ああ、光とかいう男の子だろ?俺が知らないわけないだろう」
それもそうか、と思いながらあの男の話題になってることが無性に気に障る。
「そいつも店長と同じデュポン持っていたよ」
「ふ~ん」
あまりにも関心がなさそうな声を出し、もうあの男のことは話題にするのをやめようと思った。
店のビルの目の前で車が止まる。
「ありがとう、お先に……」そう言いながらあたしは車から降りて、エレベーターに乗り込んだ。
7時50分……
ギリギリセーフだ……。
店に着いた瞬間に黒服達に「おはよう」と言い捨て慌てて更衣室へと向かった。
そこにはもう、誰一人と残っていなくて慌ててドレスに着替え、鏡の前に立った。
纏めた髪は崩れることなく、直す必要もない。
バッグからポーチと携帯を取り出すと、更衣室から出て待機室へと向かった。
ガヤガヤとしている待機室はどうも好きになれない。
そして今日は、いつもにも増して話が盛り上がっている。
いつもなら話し相手のうるさい美波が……
「あっ!!」美波のことをすっかり忘れていて思わず出してしまった声に女の子たちの視線はあたしに向けられた。
「ごめん」気まずい空気の中から飛び出し、黒服の元に駆け寄った。