⁂ダイヤモンド⁂
なんだか、落ち着かない
仕事がいつもみたいに出来てない
なんせお客さんの話がうわの空だ……
そしてあたしの視線は店のドアの方ばかりいっている
「未来ちゃん、大丈夫?」
「あ、うん、ごめんね」
そう言いながら空いたグラスを慌てて手に取ると「無理しなくていいよ」と笑ってくれた。
本当にあたしはおさんに恵まれていると思う。
笑いながら首を縦に振ると、ゆっくり空いたグラスに氷を入れお酒を注いだ。
なに、気にしてんだか
一瞬であの男のことを頭から消し去ると、あたしはいつも通り仕事を淡々とこなして行った。
「お取り込み中の所申し訳ございいませんが未来さんお借りしてよろしいでしょうか?」
黒服が腰を低く佐久間さんに言い寄ると「だめ、今日は未来ちゃんお疲れだから」なんて言いながら「冗談だよ」と笑って見せた。
「ごめんね」そう静かに呟くと「待ってるよ」と頭をポンポンと叩いてくれた。
「行ってくるね」そう手を小さくふりながら、黒服の後に続くと待機所にいる女の子達が盛り上がっている。
そんな盛り上がりの中に入った瞬間にそれは途切れて、あたしに視線が注がれる
「なに?」
心の中で呟いたはずのその声はどうやら口に出ていたらしく、一気にその場の雰囲気を壊したのは紛れもなくあたしだ。
「いや……」
「いやっ」
「なんでもないです」
口ぐちにそう言う女の子達にあたしは苦笑いをしながら、黒服の方へ足を運んだ。