⁂ダイヤモンド⁂
「本日はご指名ありがとうございます、未来さんです」男は「どうも」と笑顔であたしにお辞儀した。
なにが“どうも”だよ、
そしてなんだ、その謙虚さは……
「初めまして……」
そう言いながら、ソファーに浅く腰を下ろすと男は、また嘘くさい笑顔であたしに微笑んだ。
なにを話していいのか分からない。
黒服が色々と店のシステムを話している間に、あたしの脳みそは溶けてなくなりそうなくらいフル回転していた。
なんだか周りの女の子の視線が突き刺さる。そんなにこの男は有名な男なのか?
あたしがその視線を合わすと、女の子達はなにも見てなかったかのように客の方に視線を戻す。やりづらいったらありゃしない。
「なぁ、あのさVIPルームに移して貰えないかな?視線がうざってぇ……」
「だったら……」
だったら、初めからそうしろよ!!!
なんて喉まで出かかったが、それを呑みこみ「はい、分かりました」と黒服を呼んだ。
クスクスと隣で笑い声が聞こえる
「なにが、はい分かりましただよ」そう呟いた声をあたしは聞き逃さなかった。
目の前にあるボトルでいっそのこと、この男の頭をかち割ってやろうか
そんなことしたら、あたしは一躍有名になれるだろう
そんなことを考えてしまうほど、あたしはこの男の隣にいるだけで怒りが上昇してしまうのだ。