⁂ダイヤモンド⁂
「仕事姿を見にきたんだよ」
そう言いながら、あたしの作ったお酒を確認するかのようにグラスを持ち上げ眺めていた。
「はっ?あたしの?あんた美波のために来たんでしょ?」
もはや、この部屋に移った途端にあたしの言葉が乱暴になっていく……。この男にいい接客なんてする必要すらない。
「いや、美波はつかわせて貰っただけ……」
「はっ??」
「だから、俺はアンタの姿を見に来たの。逢いたくてね」
真剣な眼差しであたしを見つめ、小さく呟いた目の前の男にまた拓哉を重ねた。
「は、はっ?笑わせんなよ、ふざけんのもいい加減に……」
「嘘に決まってんじゃん、信じんなよ」
そう声を上げて笑っているクソ男に本気で殺意が芽生えていた。
「NO,1でしょ?どんな仕事をしてんのか見にきただけだよ、あんな愛想悪くて態度悪い女の仕事姿が気になっただけ」
持ち上げて眺め続けていたグラスを口元に持っていくと一気に流し込み「はい、仕事」と目の前に空のグラスを置いては微笑んだ。
無理だ……
本当に無理……
氷を取ろうとしている手が怒りで震えている。
美波の為に来たんじゃないとしたなら、コイツは本当にあたしを潰しにきただけだ。
「美波には内緒ね、アンタに少なからず興味があって来たってことは……美波ちゃんは俺の大事なお客さまだからさ!!」とはにかんだ。
言葉を失っているあたしを見ながら、目の前のボトルを持つと「仕事遅いね」そう言いながら自らグラスを引き寄せ、こぼれそうになるまでお酒を注いでいる。
「一応、仕事はしてくれる?せめて酒くらい作ってよ」そう冷めた目であたしを見ると、再び一気に飲み干す。
美波はきっと、この男の本性を知らないのであろう
なんだか、隣にいる男を見つめながらそんなことを考えなんだか酷く心を痛めた……。