恋ノ神
ぐっと恐怖心を堪えながら晴が言う。
「今でも俺らの事恨んでんの?」
「恨まない方がおかしいさ。」
以前よりも強気に出ている晴だが、周りに人がいないため、焦りが顔に出ている。
「そりゃそうだよねー。じゃ、咲夜も嫌い?」
「・・・」
「やっぱり嫌い?そうだよね、あいつのせいでいじめられたんだから。」
その言葉を聞くと、晴は震える唇を動かした。
「違う」
「え?」
「主犯はアイツじゃなくて・・・お前だろ」
「あ~、気付いてたんだ?」
「五十嵐があたしと喋ってた時、『主犯の奴が言うに・・・』って言ってた。ってことは、あいつ自身は主犯じゃないって事だ。それに・・・」
黙りこくったように見えたが、爪が食い込むくらいに拳を握り締め、晴が凛々しい顔で前を見る。
「咲夜が本当にワルなら、騙されていないんなら、あんなに反省するもんかよ」
咲夜のことも気付いていたのだと分かると、これはうまくいきそうだと胸を撫で下ろす。
宙人は「へぇ~」と感心したように言うと、何か企んだような顔になる。
「そうだよ。アイツには何にも非は無い、ってゆうか、吹き込んだの全部俺だから。」
「今までの行動からして、それくらい知ってる。」
「・・・随分生意気になったじゃん。」
「それが・・・どうしたんだよ。」
「本当は怖いんじゃないの?」
本当は怖いはずだ。
私も思いたくないが思ってしまう。晴の表情は強気ではあったものの、その奥に恐怖が映し出されている。