恋ノ神
じりじりと宙人が晴に近づく。
「やっぱ怖い?」
「・・・っ」
悔しそうに晴が唇を噛み締める。
そんな事などお構いなしに、宙人はすぐ晴の目の前に来た。
「ふぅん、結構美人になったじゃん。」
宙人は背が高いらしく、普通より背の高い晴をも見下ろしていた。
晴の左頬をゆっくりとなぞる。
彼女の背筋に寒気が走るのがこちらにも伝わって来た。
―今だ。
私はコンビニの横から出てきた咲夜に目を向けた。
どうやら予想どうりに到着したらしい。
私はニヤリと笑うと、あらかじめ持ってきておいた竹刀をゆっくりと咲夜の横にもたれ掛からせる。
それに気付いたらしい咲夜は、ハッとして竹刀を掴む。
・・・晴Side・・・
しまった。
あたしはそう思う。
目の前にいる仇を見て急に震えだしそうになる。
余計に強気に出たのが、返って仇になったらしい。
「結構美人になったじゃん。」
この言葉を聞くなり、寒気がしてくる。
―これは多分襲われるな。
絶望的な予想を前に笑えて来そうだ。かと言って、敵を殴りつけられる勇気もあたしには無い。
しかし、こいつに会って良かった事も、あると言えばあるだろう。
咲夜が主犯、いや、イジメにすら加わっていなかったことが確認できていたからだ。
この前の図書館ではついああ言ってしまったが、過ぎてしまった事なので仕方ない。
そう思うとつい苦笑してしまう。
―よりによって、悪く考えたらこんな奴に襲われるのかよ。