恋ノ神


私の血が、あんたにも流れるんだねぇ。

感心して言うおばあちゃんの言葉も蘇る。
巫女で霊能者だというおばあちゃんの血が私にも流れている。

嘘だと思っていたが、それが本当だったという事を知ると、私に絶望という不幸が降り懸かる。

無意識に涙が流れ出す。

「やっぱり…」
「友紀…」

幸さんの困り顔が見えた。しかし、涙でぼやけて見える。

「やっぱり…こうなるんだ…」

幸さんが何か言おうとしているが、お構いなしに言う。

「たった一つでも幸福があれば、すぐにまた不幸になる…今にしても…。私は…幸さんにもっといて欲しかった…!好きだから…」

言いたいことを全てぶちまける私を見て、幸さんが何かを堪えるのが見えた。その時、私の背中に空気が通るような感触がする。

幸さんが私の背中に腕を回している。
それが、私には抱きしめているようにも見えた。

「俺だって…一緒に居たかった…」

涙混じりの声。
幸さんは私を放すと、うつむいて言う。

「友紀には会いたくなかった…。別れがもっと辛くなるだけなのに…」
「さッ……!」
「すまない、両想いになっておいて、消える…なん…て…」

幸さんの身体が見る見るうちに透けて行く。

嫌…!

「行かないで…ッ!」

手を伸ばした時には手遅れだった。幸さんが見えなくなると、私はその場に崩れ落ちる。

「幸さん…」

その一言を呟くと、私は誰も居ない公園で寂しく泣く。

初めて会った日

自分の事を教え合えた時

透けていたけど、抱きしめてくれた時

全てが頭に浮かんできた。

あの時願ったことは確かに叶った。
しかし、それもたった一瞬に過ぎなかったのだ。

もう、幸さんには会えない。

その言葉が、私の中に沸き上がった。
そんな私の鞄からは、いつの間にか、綺麗にラッピングされた一つの小さなチョコレートが出ていた。

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