恋ノ神
………
心の中で友紀の泣く声が聞こえる。
手遅れだった。
私は願いを言い終わってからその場にへたりこむ。
三途の川を渡ったら願いは無効になる。
仕事は失敗に終わった。
その言葉が意味することに、私は唇が震える。
また…救えなかった…
罪悪感に押し潰されそうになりながらも、何とか平常心を保つ。
「…ちくしょう」
小さく呟いてから、拳を壁にたたき付けた。
「…ちくしょうッ!!!」
自分の無力さに怒りを覚えているのか。私も情けないものだ。
そう思っていると、横に誰かが立った。
阿修羅だ。
「何怒ってんだよ」
「知らなくていい」
「ハディスから伝言」
「だから放っておいてくれって…」
本当に怒鳴りつけつやろうとしたとき、阿修羅の口から意外な言葉が出た。
「『幸という人間を川の前で止めています。早く願いを言って下さい』って。」
え…?
耳を疑うが、阿修羅は確かにそう言った。
そうか。
私は照らされた光に感謝する思いだった。
ハディスは黄泉の国から私の様子を見ていて、それで幸を三途の川の前で止めていてくれたのだ。
もう一度願いを言えば、願いは叶う。
私は急いで星に向かって念を送る。すると、10の星は私の頭上で眩しく光り、天へと舞い上がった。
すぐに幸のいた公園に向かう。