恋ノ神

至近距離で本を覗き込む瀧太郎を、蒼は鬱陶しそうに、それであって緊張した顔で見る。
そこで私は「もしや」と思う。
こんな短時間でも、蒼は瀧太郎に好意を持ったのではないのだろうか?

だとしたら良い傾向だ。

このまま近づく機会を増やしていけば、いずれ蒼は瀧太郎と両想いになる。
この先で何のアクシデントも無ければ、この恋は上手くいくだろう。

「ふうん・・・本ってのも悪くねぇな。」
「!そう思うのか?」
「嘘は言ってねぇよ。」
「あ・・・。・・・ありがとう。」

蒼の目が少し輝いた。
これで完璧に瀧太郎に対しての良い印象が付いた。
その調子だ、とひそかに声援を送る。
日が暮れ始め、2人は一緒に図書室を出た。

「あっ・・・あのさ・・・」

強張った表情で、瀧太郎が言う。

「明日・・・また来てもいいかよ。」
「・・・いいよ。静かにしてくれるならな。」

やった!
私はガッツポーズをとる。
何も手助けしなくても出来たじゃないか。
手を貸す必要なんかなかったな。
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