恋ノ神
インドに着くと、私は須弥山に向かった。
とても高い山のため、空を飛んでいる私にとっては見つけやすい所だった。
須弥山に着くと、私はそこに建ててある石の祠にもぐりこんだ。
神の家とされるこの祠は、人間でなければ誰でも入れる。
祠の中は神にしか分からない異次元空間。
しかし、見てみればほとんど人間のアパートの部屋と変わりない。
その部屋には色々なロックバンドのポスター、CDなどが積んである。
たとえるならロック好きの高校生の部屋に似ていた。
インドと言えば普通はカレーだろうと私は思うが、『彼』の事だから仕方ない。
すうっと息を吸うと、私は大声で言った。
「阿修羅ッ!!出て来んかぁッ!」
怒鳴ってやると、寝室らしき部屋からのっそりと阿修羅が出てきた。
見かけは私と同じ高校生。
背中まである黒いメッシュの入った金髪に鋭い目つきは、瀧太郎とはまた違った意味で威圧感があり、まるで猛虎を思わせた。
しかし、顔は普通よりも整っており、今で言えば美少年・・・イケメンなわけだ。
「どうしたんだよ、人が寝てんのにうるせぇな。」
お前は人じゃなくて神だろう。
「貴様ぁ~・・・!仕事の邪魔しておいてなにを呑気に・・・」
「は?邪魔した覚えなんてねぇよ。」
確かに彼には邪魔した意識など無いのだが、あの男は明らかに阿修羅の担当した男だった。