恋ノ神

「そうだッ!」
「へ?」

突然言葉を遮られた阿修羅は、丸い目で私を見る。

「阿修羅、喧嘩に負けた奴は弱く見えるか?」
「あ・・・当たり前だろうが。弱いから負けるんだろ。」
「やっぱり!そうだよな!」

何を言ってるんだという目でこちらを見る阿修羅を差し置いて、私は一人で作戦を練った。

そうだ。負けた奴は弱い。
つまり、蒼には喧嘩に負けた瀧太郎が弱く見える。
だからその穴を埋めるには、瀧太郎の強いところを見せなければならない。
・・・しかし、そこをどうするかだ。
弱い者をいたぶらせては大人しい蒼にとっては返って悪印象になる。
そのためには柄の悪い者を倒させなければいけない。

「柄の悪い者かぁ・・・。」

一人で呟く。
例えば・・・ヤクザ。いや、それは強すぎる。
ヤンキーは?・・・ダメだ、数を増やして襲い掛かりかねない。
すると、横から阿修羅が声をかけて来た。

「お前、人の心を操って喋らせれるんだろ?なら、何か頼れそうな言葉で口説けば・・・」
「頼れそう?」

その一言の単語が、大きなアイデアになった。
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