恋ノ神
日本に帰った頃には既に翌日になっていて、学校で二人を見かけた。
いつものように喋っていない。
やはり例の件がまだ残っているのだろう。
下校時間だったようで、すぐに友達と帰っている瀧太郎を見つけた。
いつも通りの顔だが、活気が無い。
私から見ればすぐに分かった。
それを見てすぐに後ろについて瀧太郎の背中に『神の護り』の札を張った。
札は体に染みるようにして消えていった。上手くいった証拠だ。
さてと、次は蒼・・・ではなく、阿修羅が担当していたあの柄の悪い男を捜した。
と言うのも作戦のうち。
願い事が叶って自分が無敵だと思っているあの男は、手当たり次第に誰かを襲っているだろう。そこでだ。
戦いの神である阿修羅に願い事をしたと言う事は、あの男は以前はきっと弱かったに違いない。だから『神の護り』を使った。
だが、『神の護り』を瀧太郎に使えば、男と瀧太郎の力は互角、いや、絶対に瀧太郎が勝利できる。
彼らを戦わせるためには、蒼が必要だ。
もし、蒼とあの男がすれ違えば、有頂天の男は蒼を襲うに違いない。
中年の男に大人しい女子高生は恰好の獲物だ。
彼女が危ない時にその場に瀧太郎が居合わせれば、必ず彼は蒼を助ける。
そうすれば、あの「負けた」と言う悪印象は見事帳消しになるだろう。
我ながらいい考えだ。