恋ノ神

(蒼に触んなッ!)

威勢の良い心の声が私の耳に届いた。

「そんなに蒼が好きなんだ。いい事だな。」

私は空中に浮かびながら呟いた。

瀧太郎が走ってくる事に気付いた男は、蒼の手を放し身構える。
勝てる気は満々のようだ。
だがゴメンね。君は勝てない。

「瀧太郎・・・!?」

いつの間にか、彼女は素が出ていたのか、いつも苗字で呼んでいたのに名前で瀧太郎を呼ぶ。
瀧太郎には聞こえなかったようで、必死で男と殴り合う。
幸いにも顔に怪我は無い。
腕や額を狙われているが、頬には当たっていなかった。
そして男の振りかぶるような打撃を避けると、膝で男の鳩尾を突いた。

気を失うまでの力は入っていなかったようだが、男はおののきながらその場から走り去っていった。いや、本当のことを言えば私がそこに行かせたのだが。
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