恋ノ神
彼女の追跡の前に、その『学』と言う教師のことを調べる事を優先した。
美咲の通っている学校は最近出来たようで黒ずみの一つも見られない白い壁。
銀色に輝く校章。
六角形の枠の中に米印が刻まれている。
生徒達は黒色のブレザーにチェックのリボン、ネクタイの制服を着て通っている。
職員室はクーラーがかかっているようで、涼しい空気が漂っている。
しかし、どの名札を見ても学の文字がない。
「いないし。」
悪態をつくようにいうと、教師達の会話を聞くことにした。
聞いていればいずれいつかるだろう。
最初に目をつけたのは首元まで茶髪の伸びている教師だった。
20代に見えて背が高くスラリとしており、タバコを吸っている。
「あ、児玉(こだま)さん、またタバコ吸ってる。」
「いいじゃねぇか。他の奴だって吸ってっし。」
若い女性の教師に言われ、児玉と呼ばれた教師は唇をすぼめて言う。
「体育の教師なのに、それじゃ体壊して運動できなくなるわよ。」
体育の教師か。
確かに運動神経もよさそうだし、と私は児玉をまじまじと見る。
だが、もっと言えば顔もそれなりによかった。
若い女性を引き付けるには最適な顔つきであった。
学ではなく児玉ではないのかと思ってしまう。
しかし、児玉の下の名前は直哉。
学ではなかった。