恋ノ神

「いえ、私は後輩ですから、色々お世話になってますし。」

礼儀正しく言うと、学は自分の席に座る。
他の教師よりも整えられていて、全く散らかっていない。
学年や組が書かれていないため、どうやらまだ担任まで回されないらしい。

「そういえば、さっき俺のクラスの生徒が、美術の評価カード出しに来たぜ。これ。」
「あ、どうもありがとうございます。」

軽く頭を下げると、プリントを受け取る。
どうやら学は美術講師のようだ。

「この子、提出は遅れてますけど、書いてあることはしっかりしてますね。」
「え゛?そう言うのってマメに見てんのか?」
「はい。」
「・・・面倒くせぇな。」

その言葉に学は苦笑すると、赤いペンで丸をつける。
美咲はこの男の優しさに惹かれたのだろうか?
十分ありえる話だ。

とにかく、学と言う人物は分かった。
次に美咲だ。
普段の生活が分からないと接点や機会が見つけにくい。

美咲のクラスは一年五組。
朝見た友達と弁当を取り出している。
・・・しかし、次に取り出したのは大量のマニキュア、コロン、リップクリームなどの化粧品だった。

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