恋ノ神
いや、聞こえたといっても、私にしか聞こえない心の声だが、確かにあれは美咲の声だった。
学校のような勝気な声などどこにも無く、ただ弱々しい泣き声のような声だ。
私は数時間前まであのように美咲が悪ぶっていたのは欲求不満のせいかと思ったが、もう一つの理由はここにあったのだと分かった。
彼女が荒れているのは、この家庭環境が問題だったのだろう。
きっとこの口論は今日だけでなく、きっとこの様子だといつものように喧嘩しているらしい。
「それじゃあ、ワルになったって仕方ないよな・・・。」
両親の口論がおさまるのを待っていたが、いっこうにおさまる様子も無く、それどころかどんどん酷くなっていく様だった。
見捨てるつもりはないが、今日はここまでにしてまた明日実行しよう。
そう思うと、私はその家から出て、背を向けて飛んで行った。
その翌日、私は再び学校へと向かう。
やはり学校ではいつもと同じ酷いそぶりが見られた。
何度も願いを保留してやろうと思うが、その度に昨日の美咲の家内の様子を思い出して必死に耐える。
一方、学や美咲以外にも気になる人物がいる。
それは、友だ。
かわいそうな子というだけでなく、どこか覚えのある空気感をまとっている。
決してデジャブーではなく、本当に身に覚えがあった。
しかし、それが思い出せない。