恋ノ神

美咲は学が目当てなのか美術部に所属している。
まあ、それで彼女のストレスが満たされるならいい事かもしれないが、どうやら周りからは白い目で見られているようだ。
というのも、美咲以外は皆大人しそうな者ばかりだからである。

彫刻等を使った作品を作るため、危険そうな道具を使っている。
学が美咲の横を通ったとき、私は「しめた!」と言わんばかりに指を鳴らし、念動力でわざと彫刻等の刃先を動かし、美咲の指に軽く傷を付ける。
暴力の目的で人間に傷を付けることは禁止されているが、依頼に関連している事なら許される。

「痛ッ!」

美咲の指先から血が流れる。
今まで散々私を馬鹿にしてきたことを兼ねての行動だ。
美咲の声に気付き、学が振り向く。

「あ、怪我・・・。大丈夫ですか?」
「あっ・・・」

心配そうに学が駆け寄ると、また純粋に顔を赤らめる。
美咲の指を見ながら、学が絆創膏を取り出す。

「彫刻刀はよく切れますから、気をつけてくださいね。」
「・・・はい。」

目をそらしてしまうのか、美咲はそわそわしていた。
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