恋ノ神

友の苗字は影村(かげむら)。

見た目からしても暗そうなこの苗字に、私はあることを思い出さされる。
あれは300年前の事だっただろうか・・・。
天草一揆から少し経った年、私はある男の願いを受けた。
当然、私は仕事を完遂させる気でいたのだが、邪魔された。
その男はいろいろな人間から恨みを買っていたらしく、ある女性に彼を殺させた。
今でも覚えている。
あの恐ろしい邪気、友と似た顔立ちの女性。
彼女も「影村」という苗字だった。

―呪術家業・・・影村家。
代々から呪術師として名を轟かせていた一族。
室町時代から江戸時代末期まで有名だったが、科学が発達し、呪いが信じられなくなるにつれ、その名はどこかに消えてしまった。
友の家系を室町時代からさかのぼって見てみると、やはり300年前に見たあの女性の顔もある。
まさか末裔がいるとは思っていなかったため、すっかり忘れかけていた。

強敵だ。

私はグッと唇を噛んで思う。


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