恋ノ神
「彼女と仲直りしたい。彼女と一緒にいたい。」
口に出して念を送った。
これは催眠術に似ているが、この術は直樹の中にあった本当の気持ちを引きずり出したのだ。
人間と言うのは心にさえも嘘を付く者が多いから、この術が最適なのだ。
心の本性を引きずり出す事で、その意志を強くし、本人に行動に移させる。
そして、「ふられたらどうしよう」という恐怖心を取り除いた。
取り出した感情は小瓶に取っておく。
恋の仕事に邪魔な者に使うのだ。
特にはいないのだが、緊急事態に備えてだ。
私は次に彼女の方に向かう。
彼女にもし直樹と一緒になりたいと言う気があるのなら、それを最大限に生かすまでだ。
まださっきまで泣いていたのか、近くに寄ると目が赤かった。
私は直樹にいった事と同じ台詞を聞かせる。
ほぼ同じことを繰り返しながら、彼女の頭に手を当てて念を送った。
「彼と仲直りしたい。もう一度、会ってみよう。」
私が空中に舞い上がった頃には、彼女は直樹のいる公園に向かった。
直樹の時にあらかじめ送っておいた「今すぐ会いたい。公園で待ってます。」と言うメールのおかげだ。