恋ノ神
声のした方を見ると、屋上に続く階段には依頼人ともう1人の少女。
ストレートパーマもかかっていないと見られる髪をポニーテールにしており、色黒の肌は髪色に馴染んでいない。
筋肉質ではないが贅肉も見られない、中でも特に印象的なのが目。
ひときわ大きな茶色の目が日にあたって輝いている。
−これはかなりのメリットだな。
私はそう思う。
これだけ容姿が良ければ人目はかなり引き付けられるだろう。
うまくすれば容姿のいい者が晴(確信はないが、たぶんそうだ)に恋心を抱いているかもしれない。
「晴、何弁当買った?」
「今日は鶏がら。明日はオムライス買う。」
「あと何種類で学食制覇かな?」
「~まだ12種くらいあるな。」
そう言いながら、晴が照り焼きにされた鶏肉を口に運ぶ。
臭いに負けて、つい涎をたらしそうになる。
「晴ご飯ものばっか食べてるな。最近クリームパン流行ってるのに。」
「凛々乃(りりの)は米派だろ?」
凛々乃と言うのは、たぶん体格のいい方の少女の事だろう。
「まあね、男子に聞いたらたぶん皆パンって言うだろうけど。」
それを聞くと、晴は突然グッと眉をしかめた。
晴の様子が変わったのに気付き、凛々乃はハッと口をつぐむ。
「ご・・・ゴメン。つい・・・」
「いい、ちょっと考えただけだから。」
「今度から気をつけるよ。」
「気兼ねしなくてもいいって。凛々乃らしくない。」
気さくに笑いながら弁当の米を口にかき込む。
そして、文句をつけるように話を戻した。
「日本人なら米食えっての。」
言うねぇ、と、私はクックッと笑う。