恋ノ神

誰だろう、と名札を見てみる。

―五十嵐 咲夜(さくや)

背は低くも高くも無い、チャラチャラした鎖をズボンにつけているが、髪を染めている様子は無い。
むしろ、黒すぎるくらいの目と髪の毛は真面目な学生を思わせる。
鋭く大きい瞳は、どこか懐かしさを感じさせる。
髪は短いわけでもない。そこまで長くも無いが、スポーツ刈りにしてあるわけでもない。
一見喧嘩に強そうな彼の外見もまた懐かしい。
何が懐かしいのかと自分に問い詰めた。
そのくらい気になる。が、放っておく。

「あー、綾織って綺麗だもんなー。」
「お前もカッコいいんだから、コクれば?」

そうだそうだ、と私も言うが、咲夜は悲しそうな残念そうな顔をする。

「・・・それは、無理だ。」

君の顔なら大丈夫だ。
そう笑い混じりに突っ込もうとしたが、どうやらルックスの問題ではないらしい。

(許してくれねぇよ、あいつは・・・)

咲夜の心の声。
一体何を許しを請う必要があるのだと思い、さらに声を聞いてみる。

(今更いじめてた相手のことなんて・・・好きにならねぇよな・・・。)

いじめてた・・・。
それを聞いて、何故咲夜が告白できないかという理由が分かった。
ルックスではなく、2人の関係の問題にあったのだ。

つまり晴と咲夜は、いじめの被害者と加害者だ。

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