さよならマイヒーロー
今度こそ終わりだと肩をならしつつ階段を下りていたら、階段の陰からまたしてもあほな声が聞こえてきた。
「………だからさ、ほのか。お前あそこでなんて言うつもりだったんだよ」
「あたしのお兄ちゃんを返してもらおうとだってだって」
「だってだってじゃないって。ていうか日本語になってないよ、ほのかそれ」
「あーだってもう冗談じゃないんだもんー!」
あぁそりゃ冗談じゃねぇもんよと心中突っ込みながら、もうちょっと観察してみることにする。まぬけなことに2人そろって気づいてねぇし。
「や、冗談じゃないんだしさ。あそこであたしのお兄ちゃんを返せ変態とか言ったら、遙さんだってホモってことになるんだよ、いいのみんなにそう思われて」
宥めすかす高岡の声に、歯ぎしりが聞こえてきそうな勢いで南が唸っている。
「…………………それは、やだ。やだけどなんかその一組セットみたいないの認めたくない……! っていうかたっちゃん、あたしに協力してくれるんじゃなかったっけ!?」
「――――これ以上ないくらい協力してると思うんだけど」
深い高岡のため息にだろうなぁと思う。いっそ見てて面白いくらいには哀れだ。
「足りないよ、たっちゃん、足りないよ。そんなんじゃ「お兄ちゃんを沢田先生の魔の手から救う会」の副会長になれないよ!」
「別になりたくねぇよ! ………っていやちがうちがう、ほのか。別にそう言うあれじゃなくてって、誰か笑……沢田先生!?」
人のことを珍獣か何かみたいにぎゃっと叫んだ高岡に、高岡とでこ付き合わせて雄弁をふるっていた南が顔を上げた。
「――――痛っ!!!!」
……そりゃ、なるわな。
額と顎をそれぞれ押さえて悶絶しているあほ2人に教師として一声かけてやる。