さよならマイヒーロー

あたしのお兄ちゃんは、妹のあたしが言うのもなんだけど、美人だし優しいし、頭も良いし料理も上手、器用で文句の付け所がない自慢のお兄ちゃんだ。

そんなあたしのお兄ちゃん。南 遥。26歳。
大学在学中に新人賞を受賞した新進気鋭の絵本作家だ。ちなみにペンネームは『みなみ はるか』。

……と言うと、お兄ちゃんはまだまだだよなんて謙遜するけど、そんなことないのはあたしが保証する。
大賞を受賞した『ほんわか村の人々』シリーズの売り上げも絶好調だって担当の高村さんだって言ってたし。


「ほのかちゃん? 聞いてる?」

「え、何だったけ、お兄ちゃん」


……駄目だ。

現実逃避しようと思ったけど無理だ。
もうちゃんと聞いてよと拗ね気味にお兄ちゃんは言うけど。


「だから、もうすぐ来るから。ほのかちゃんもちゃんと制服着替えておいでって言ってるの。晩御飯はその人も着てから三人で食べるからね」

「………分かった」


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