-獄蝶-
そして、ホテルまで歩いていた時だった。
向こう側の歩道にいたんだ。
女の子と2人で歩いている…
葵が・・・。
「…あおい・・・」
小さな声で呟いた。きっと翼には聞こえてない。
あたし、酔ってるから幻覚見たんだよ。
そう、自分に言い聞かせてたのに
「あーおーい!!!」
何故か隣にいる翼と葵は知り合いだったらしい。
最悪だ。
翼はアタシの手を引いて葵のところまで猛ダッシュしていた。
「あおいじゃん、久しぶり!」
そう、翼が声をかけると振り向いた。
その瞬間、一瞬だけ葵の目が見開いた。
吃驚したんだろう・・・。
「・・・っ!?久しぶりですね。翼さん」
2人の会話なんて耳に入ってこなかった。
葵の隣にいるのは、とてもかわいい子だった。
「・・・ちゃん、・・・ちゃん」
…ハッ!
「礼華ちゃん、どしたー?酔ってる?」
ぼーっとしてた。
「翼さん、お酒飲ませたんですか?」
―ギクッ!?
葵と付き合ってたとき、何かの祝賀会で浴びるようにお酒を
飲んだら、倒れて救急車に乗ったことがある。
それ以来、葵は絶対にお酒を飲ませようとしなかった。
だけど、雨はその事実を知らないから合コンに誘ってくる。
「なぁに、怖い顔してるの~葵。酒なんか飲ませたって死なないって。」
……。