ピュアハート
「どうしたの?すごい汗だね。それに息も切れてるし…。そんなに慌てて来たの?」
「え、…いや、…あの、遅れると思って、自転車こぐのに必死で…。」
「あはは…、そんなに慌てなくてもよかったのに。それじゃ、行こうか。」
そう言うと、私の自転車を押し始めた。
「あの、自分で―」
と、言いかけた言葉に被せるように
「いいから、いいから。」
と、鼻歌交じりに一歩先を歩いて行った。
不意に振り向くと 「お昼食べた?」と、聞いてきた。
「いえ、まだ。」
「じゃあ、ファミレスでいい?」
「はい。」
ファミレスに入るとピークを過ぎたせいか、人はそんなに多くない。すぐに席へ案内され、静かな店内で料理を注文した。
何を話していいのか分からず俯いていると、彼の方から話し掛けてきた。
「俺は君の事、何て呼べばいい?話しづらいからね。本当の名前でなくてもいいよ。ニックネームでも何でも。俺の事はリュウて呼んで。」
「じゃあ、マコで…。」