ピュアハート


私から離れると早速指示を始めた。


「じゃあ、まず両手を出して。そうそう。」


私の両手首を片手で掴む。


「次は、顔は真っ直ぐ、俺の目を見て。3つ数えたら目を閉じて。いい?…1…2…3。」


言われた通りに目を閉じた。

…リュウさんが動く気配がする。


次の瞬間、後頭部を抑えられ、唇に温かさを感じた。

驚いて目を開けるとリュウさんの長い睫毛が見えた。

頭と手を抑えられ身動きがとれない。

……リュウさんの優しい口づけにもう一度そっと目を閉じた…。

どれくらいそうしていたのか…そんなに長い時間ではないと思う。

でも私にはリュウさんの動き全てがインプットされて、随分時間が経ったように感じた。

ゆっくりと唇を離すと一気に頭に血が上り、リュウさんの顔が見れない。

せめてもの救いは紅葉をライトアップするための灯りだけではっきりと顔色がわからないこと。

俯いた私にリュウさんの両手が伸びてきて、両頬を挟んだ。


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