傷だらけのラブレター
『……。』
なにも答えなかった。
なにも答えることが、できなかったの。
直也の横顔が、壊れ物を見るように揺れていて。
あまりにも寂しげな声色は、真実を言うのを拒んだの。
『…言えない。』
はぶらかすことなく直也に秘密をした、初めての瞬間だった。
私のか細い声が消えると同時に、タイミングを見計らったかのように、私たちの間を風が吹き抜ける。
口にしたら、今までしてきた“秘密”の罪を、認めてるみたいで。
なんだか、とても胸が苦しい。