傷だらけのラブレター




『……っ。』




いつの間にか、私の手のひらは、ギュッと直也のワイシャツを掴んでいて。



直也の体温を求めるように、自分のおでこを直也の胸に当てていた。





――…全てを、言ってしまいたい。



だけど、言うなんてできないよ。





『…直也は、菜穂ちゃんがいるでしょ?』




そう言いながらも、さっきより強く直也のワイシャツを握り占めている、矛盾した私。



そんな私の髪をなでながら、直也も私を抱きしめる腕を強くする。




< 218 / 459 >

この作品をシェア

pagetop