傷だらけのラブレター
直也が身につけている柑橘系の香りと、地面に映る直也の影。
それはふいに私の影と重なり、私の鼻にはツンと、オレンジの香りが漂った。
…直也が、触れてる。
私の髪に、触れてる。
頭を撫でられるようなその感触は、なんだか心をくすぐられてるみたい。
「…はい、とれた!」
思っていたより短かった、直也が私の髪に触れていた時間。
まばたきをする間に、私に覆い被さるような体勢だった直也は、いつの間にか目の前にいて。
桜の花びらを私に差し出しながら、にっこりと微笑んでいた。