屍都市Ⅱ
あの男、ここに逃げ込んだのか…?

翔也は息を飲む。

捜査の為に、危険を冒した事は一度や二度じゃない。

自らナイフを持った犯人に飛び掛かった事もある。

殺し屋と正面から対峙した事もある。

だが、亡者の群れの中に飛び込んだ経験などあろう筈もない。

圧倒的な『死』が、この空港内には渦巻いている。

こんな場所に突っ込んでいったら、命が幾つあっても足りやしない。

恐らくはあの政府関係者の男もここで…。

そこまで考えて、翔也は頭を軽く振る。

憶測や推測で完結させてはならない。

真実を、確証を掴むまで、諦めてはならない。

探偵はいつだって、事実と真実を得る為に動かなければならないんだ。

万が一あの男がこの空港を生き延びていたらどうする?

みすみすこの大惨事の元凶を取り逃がす事になるんだぞ?

「くそ…危険手当は政府に請求してやるからな!」

大声を上げて自らを鼓舞し、翔也は空港のターミナルへと突っ込んだ!

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