屍都市Ⅱ
ターミナルは、外から見た以上の修羅場だった。

一人の人間に対して十も二十もゾンビが群がり、その身を食む凄惨な光景。

その人間も、もう動きすらしない。

とうの昔に絶命し、体中を食い千切られてボロクズのようになっていた。

ゾンビが腹部を食い千切ると、腸がズルズルと引きずり出される。

吐き気を催すような『食事』の場面に、殺人現場を見慣れている翔也でさえも口元を覆った。

その彼に対して、無数の白濁した眼が向けられる。

新たに迷い込んできた新鮮な獲物。

もう死体は食い飽きていたと言わんばかりに、ゾンビ達はノロノロと向き直って翔也を凝視する。

「っっっっ…!」

叫び出しそうになるのを必死に噛み殺し、翔也は身構えた。

こちらは一人。

相手は数え切れないほどの集団。

どう対抗すればいい…?

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