屍都市Ⅱ
「『あんたは』って…」

立ち止まり、深幸は目の前の新聞記者の顔を見る。

…以前大通りで占い師の仕事をしていた時、会社をリストラされたという冴えない会社員を占った事がある。

『何もかもに希望が持てない…もう死にたいんです』と。

その会社員は生気のない、虚ろな瞳で語っていた。

…颯太の眼は、どこかそれに似ている。

生きる事を諦めた目ではないが、自分の命をないがしろにしてでも何かを成し遂げようとしているような…そんな危うさを感じさせた。

「俺はこの街に用がある」

案の定、普通の神経ならばまず口にしないような台詞を言う颯太。

この街に用がある?

死体が立って歩き回っているような街に、一体何の用があるっていうの?

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