屍都市Ⅱ
ゾンビが逃げまどう人々を襲撃する大混乱。

この状況下でそんな事を飄々と語る深幸の胆力に、颯太は息を飲む。

大した女だ…。

この女に試され、唸らせる事ができたなら、俺にも運が向いてくるんじゃないか…?

「上等だ」

深幸の言う事も一理ある。

不敵な笑みさえ浮かべ、彼女の手の中から一枚のカードを引く颯太。

そのカードに描かれていたのは、邪悪で狡猾な笑みを湛える怪物の姿。

『悪魔』のカード。

「チッ…」

颯太は思わず舌打ちをする。

街に入る前から縁起でもねぇ…。

彼でなくとも、大抵の人間はそう思うだろう。

しかし。

「あら…いいカードを引いたわね」

深幸が微笑みを浮かべた。

「悪魔のカードの意味は『暴力』『激烈』…それともうひとつ…『前もって定められ動かせぬもの』…」

「……」

解せないといった顔をする颯太に、深幸は説いて聞かせた。

「貴方がこの榑市に来たのは運命…為すべき事、果たすべき事を果たす為に来るように決められていた…貴方にはここで行うべき使命がある…それが『定められた動かせぬもの』…」

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