屍都市Ⅱ
部屋の外に立っていたのは牧師。

「随分と寝坊しましたね」

「ごめんなさい、牧師さん」

まだ覚めきらぬ頭でマリは言う。

それにしても、牧師も彼女を起こす時間が遅い。

普段なら寝坊したマリを起こす時間は、もっとずっと早い筈なのに。

もしかしたら牧師も寝坊したのだろうか。

牧師とて人の子だ。

時には寝坊する事もあるだろう。

「まぁいいです」

牧師はマリに歩み寄り、しゃがみ込むと抱き締めた。

毎朝してくれる、抱擁。

両親がいればきっとしてくれるように、牧師もまたマリを抱き締めてくれる。

親はいなくとも、マリは愛されている。

望まれて、祝福されてこの世界に生まれてきたのだと。

それをマリに認識させる為に、牧師はいつも彼女を抱き締めてくれた。

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