屍都市Ⅱ
逃げる人々の数が多く、また渋滞する車が邪魔をしているせいか。

なかなか前に進めない。

「早く行けよ!」

「ゾンビがそこまで来てるんだぞ!」

「前の奴、早く!早く進んで…ぎゃあぁぁぁあぁっ!」

列の最後尾は迫ってくるゾンビ達にねじ伏せられ、餌食となっている。

逃げ遅れた者から亡者の群れに引きずり込まれる。

まさに地獄絵図。

多くの人達は前に進む者を引っ張り、押し退け、我先にと逃げる。

男も女も、大人も子供も、老いも若きも関係ない。

自分が生き残りたいが為に、他人を犠牲にする。

人間の本性が剥き出しになった光景。

そんな中。

『困った時は助けを求めなさい…手を差し伸べられた時は迷わずその手を掴みなさい…』

マリの脳裏を、牧師の最期の言葉がよぎる。

『そんな者にこそ、神は祝福を与えてくれます…』

ギュッと目を閉じ、ボロボロと涙をこぼすマリ。

怖い。

怖くてたまらない。

死にたくない。

なのに…。

(何でこんな時に、牧師さんの言葉を思い出しちゃうの・・・ッ?)

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