屍都市Ⅱ
マリは立ち止まる。

そんな彼女を意に介さず、大人達が彼女を突き飛ばして我先にと逃げる。

しかしマリは覚悟を決めたように、混乱の中を逆行した。

走りながら、乗り捨てられた車の中を見る。

「!」

車内の中にライターが放置されている。

車の窓も開けっ放しだった。

マリは車内に上半身をねじ込んで、そのライターを掴む。

(よし…火が点くわ)

このパニックの中で、そんな事を子供のマリが思いついたのは奇跡とも言える。

できるだけ列の最後尾付近へと近づくマリ。

そこはもう地獄と現実との、限りなく曖昧な境界線。

生きたまま人間がゾンビに食われる修羅場。

マリのような子供が見れば、一生のトラウマになるであろう凄惨な現場だった。

その最中で、マリはライターに火を点ける。

そして火を点けたまま、そのライターを窓の開いた車の中へ!

< 77 / 214 >

この作品をシェア

pagetop