屍都市Ⅱ
(や、やった…!)

ゾンビ達の追跡を封じた事で、マリの表情に僅かな笑みが浮かぶ。

炎は大きくなってきた。

このままここにいてはマリも危ない。

踵を返し、先へと進もうとするマリ。

だが、運命は最後に彼女を見放した。

「あぁあぁっ!」

炎の中から伸びてきた焼け焦げた手。

その手がマリの足を掴み、転倒させる!

…それはこの激しい炎の中でも、いまだ死に切れずに生者の肉を求めるゾンビの手だった。

「あぅぅぅぅっ…あぁあぁあっ!」

炎のついた手で足を掴まれ、その熱さにマリは苦悶の表情を浮かべる。

ゾンビは、少しずつマリを引き摺る。

己の身を焼く炎の中に、まだ幼いマリを引き込もうとする。

無慈悲にも、彼女を地獄の道連れにしようとする…!

(ああっ、神様…)

熱さによる苦痛と恐怖。

マリはただただ涙をこぼす。

(この世界が平等なら…神様が分け隔てなくみんなを愛してくれるというのなら…)

その悲しみは、つい口をついてこぼれ出た。

「どうして私だけ愛してくれないのっ!?」

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