Au revoir. A bientot.
Pherkad
遠くの星や銀河の数々が、静かにノアを照らしている。
宇宙空間に在るのは静寂のみである。
あの出来事から幾年も経ち、ノアは水星に辿り着くことなく数百・数千という星を見送ってきたし、見送られてきた。
ノアには行くあてなどない。
ただ浮遊し、時間を数え過ごす毎日。
いつも通りの毎日。無意味な日々。
自分の為すべきことは見当たらなかった。
しかし、そんなある日、ノアに電波が微かに届いた。
久しぶりの感覚で一瞬の戸惑いを覚えたが、通信機能が作動することや届いた電波が意図的なものであること、なにより自身が存在すると実感できたことに嬉しいと感じた。
この電波を逃さないように短い電波で答えながら少しずつ電波が送られてくる星に近づいた。電波を送る感覚に少しずつ慣れながら。
そして、電波がフェルカド(Pherkad)という星から来ているのに気づき、星の軌道に乗り、安定した所ではっきりと返事をした。
「コチラハ、無人惑星探査機ノア。」
「私はアシュリー。宇宙人に会えないかと思って電波を発信してたの。あなたは宇宙人ではないでしょ?」
通信相手の言葉は地球上に存在しないものだったが、何故か理解が出来た。
「ワタシハ、無人惑星探査機ノア。人ニ使ワレテイタ。」
「人?人ってフェルカド星の?無人惑星探査機なんて初めて聞いた。秘密組織の機械なの?」
「人トハ人間ダ。思考シ、感情ヲ持ツ。ソシテ、ワタシニ任務ヲ与エタ。ワタシハ、ソノ任務ヲ果タス為ニ宇宙ニ送ラレタ。」
「人間?フェルカド星には人間なんて居ないから宇宙人は居るってことね。でも、変よ。私も思考してるし、感情だって持ってる。つまり、私も人間ってことよね?」
「アナタモ、人間デスカ?地球上ノ生命体デハナイノニ?」
「質問を質問で返されるのって、私好きじゃないの。でも、あなたのおかげで地球と言う物を知れたわ。ありがとう。」
「アリガトウ…」
アシュリーとはそれから他愛もない話をした。この人は25歳の女性らしい。